9条(戦争の放棄、戦力の不保持)

『砂川事件』をマンガで解説。 アメリカ軍駐留と日米安保条約は憲法違反になるの?

2016/08/16

『砂川事件』解説マンガ1ページ目

『砂川事件』解説マンガ2ページ目

『砂川事件』解説マンガ3ページ目

『砂川事件』解説マンガ4ページ目

『砂川事件』解説マンガ5ページ目

昭和34年12月16日 日米安保条約第3条に基づく刑事特別法違反被告事件 最高裁 大法廷判決

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ポイントは?

この事件では、憲法9条について次の点が論点となりました。

・日本国に自衛権はあるのか?
・日本に駐留する米国軍隊は憲法9条2項に違反しないのか?
・日米安全保障条約は憲法に違反しないのか?

結論としては、日本国に自衛権はあるとした上で、米国軍隊の駐留は憲法9条2項に違反しないと判断しました。軍隊であったとしても、日本国の指揮権・管理権が及ばないことがその理由です。

そして、日米安全保障条約が合憲か否かについては

「(日米安保条約のような高度な政治性を有するものは)一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって…」

と述べて、判断を避けました(裁判所が判断するのに馴染まないという判断)。

このような国家統治に関わる、高度な政治性を有するものの国の行為について、司法審査権が及ばないとする考えを“統治行為論”と言います。

そして、上記マンガを見て頂ければ分かる通り、この事件の判決には訴外の出来事(アメリカ政府の圧力)が大きく影響している可能性があります。一審の判決(通称「伊達判決」)が日米の政府に与えた衝撃は相当なものであったことが想像できます。このような経過は、本来であれば試験対策としては不要な知識となります。しかし、判決が出るに至った事実関係として訴外の出来事とは言え、判決に影響を与えた可能性が大きいという考えの基に全てマンガとして紹介しました(アメリカ政府からの圧力が無くても、同じ判決が出た可能性ももちろんあります)。

*アメリカ大使がアメリカ大使館に最高裁長官を呼びだしたとするマンガ部分は想像です。アメリカ大使館でアメリカ大使と最高裁長官が会談をしたのは事実ですが、最高裁長官が、自らアメリカ大使館に出向いた可能性もあります。

ちなみに、最高裁は最高裁長官がアメリカ政府の圧力の言いなりになったということが判明してから、コメントを求める取材に対して「事実かどうか分からないからコメントなんてできないよー」と言っています…

さて、近年になって日本政府が集団的自衛権を盛り込んだ、安全保障関連法案の合憲性を訴えるためにこの砂川判決を持ち出しています。なぜかと言えば、砂川判決で最高裁が日本国の自衛権を合憲と認めたからなのです。

とはいえ、砂川判決では“自衛権”という言葉は使われていますが、個別的自衛権、集団的自衛権の区別はされていません。さすがに、集団的自衛権まで最高裁が認めたという理屈は飛躍し過ぎという気もします。
*個別的自衛権…自国への攻撃へ反撃する
*集団的自衛権…密接な関係がある他国への攻撃へ日本国も反撃する

↓民法判例マンガはこちらをどうぞ。

www.sibakiyo-minpo.com

関連条文は?

日本国憲法第9条
1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

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